兵は詭道なり!

孫子の兵法の第一章計篇にある言葉としても広く知られているこの言葉。
エシディシが発したこの言葉は、ジョセフが勝利というのは戦う前にすべて既に決定されていると、孫子の言葉を引用したため返したセリフです。
詭道とは、作中でエシディシが説明している通り敵を欺くこと。
また、孫子で書かれる兵とは、戦を指しています。
辞書では“正道ではない、不正な手段”だと書かれていますが、孫子の著者とされる孫武が生きていた春秋時代の中国では正攻法ばかりでは国を存続させることはできません。
しかし、孫氏の冒頭に“兵は大事にして、死生の地、存亡の道なり察せざるべからず。(訳:軍事とは、国家の命運を決する重大事である。軍の死生を分ける戦場や国家の存亡を分ける進択は、慎重に明察しなければいけない。)”とあるように、孫氏で説かれているのは、戦争はやむを得ず行うべきものであって、戦いをせずして勝つことを理想としています。
そのため、平時の時から政治や外交、時には計略をもって自国が有利な状況をつくりだすべきだと孫子では書かれています。
エシディシは、ジョセフが引用した孫子の言葉を引用し返すことで、その手は自分には通用しないと言い切ったのにも関わらず、ジョセフの騙しの手品の術中見破れずあえなく敗北。
最期は自分のプライドをかなぐり捨てて、仲間であるワムウやカーズを守るためスージーQへ取り憑くことになります。
孫子兵法『計篇・三部』 読み下し文引用
兵は詭道なり。ゆえに能なるもこれに不能を示し、用なるもこれに不用を示し、近くともこれに遠きを示し、遠くともこれに近きを示し、利にしてこれを誘い、乱にしてこれを取り、実にしてこれに備え、強にしてこれを避け、怒にしてこれを撓だし、卑にしてこれを驕らせ、佚にしてこれを労し、親にしてこれを離す。その無備を攻め、その不意に出ず。
■出典:浅野裕一『孫子』(講談社学術文庫)より
これ兵家の勝にして、先には伝うべからざるなり。
ちなみに孫子の兵法をまだ読んだことのない方は、下記の著書がおすすめですのでぜひご一読をば!